スリルとユーモア/「死神の浮力」伊坂幸太郎

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スリルあるポップなお話、好きですか?

 

 

死神は出てくるけど直接手を下さない。

死神はとても音楽が好きで、人の話を聞くより音楽を流させようとする。

死神には死がないので歴史上の出来事を見たかのように話す。

死神は人間の姿をしていて、人は死神と気付かない。

 

こんなに死神が身近でそして面白く感じられる作品、ないと思います。

 

それがこの伊坂幸太郎さんの「死神の浮力」

 

 

ストーリー(「あらすじ」より)

娘を殺された山野辺夫妻は、逮捕されながら無罪判決を受けた犯人の本城への復讐を計画していた。そこへ人間の死の可否を判定する“死神”の千葉がやってきた。千葉は夫妻と共に本城を追うが―。展開の読めないエンターテインメントでありながら、死に対峙した人間の弱さと強さを浮き彫りにする傑作長編。

 

娘を殺害した犯人に復讐を果たそうとする夫婦とその夫の生死を決める死神の話です。

人間の泥臭さや強さが感じられます。

 

あらすじに追加するとしたら

死神は7日間の調査を経て相手の死を決定するか見送りにするか決める

死神は音楽が好き

という情報を頭に入れておくとより物語が楽しめるかと思います!

 

こんなひとにおすすめ!

・くすっと笑える会話が好きな人

・スリルある展開が好きな人

・アクション×ミステリーが好きな人

 

前作の「死神の精度」を読んでいなくても十分楽しめます!
上のようにスリルある軽快なリズムの作品を楽しみたい人なら絶対におすすめです!

 

みどころ

サイコパス/善人の構図が分かりやすい

娘を殺した本城という男と、復讐を果たそうとする山野辺夫妻。

本城はとても用意周到で用心深く、そして人を貶めることを躊躇しないタイプの人間、まさしくサイコパスと言えます。

 

一方山野辺夫妻は復讐しようという気持ちが強いのですが優しさが捨てきれず何度も本城の罠にハマってしまいます。

こういった対立構図が分かりやすく物語がすっと入ってくるのが特徴です!

読みながら山野辺夫婦を思わず応援してしまう、ハラハラできる小説です。

 

 

何重にも張り巡らされる策略が面白い

本城を追う山野辺夫妻は、色んな筋から情報を手に入れては近づこうとします。

しかしそのたびに本城の一枚上手の策が張り巡らされていて思うようにいきません。

 

特に好きなシーンが、本城一味に山野辺夫妻と死神の千葉さんが捕まるところです。

拷問に合う千葉さんを救いたいと思う山野辺さんの前に、一人の男がすっと拳銃を渡してくれます。

山野辺さんはその男から拳銃を受け取り千葉さんを救おうとしますが、実はその男が本城本人で全て彼の想定内の動きだったのです。

 

徹底した屈辱を与えようとする本城の策略がとても巧妙で、そこに陥っていく山野辺夫妻が読んでいてとても心が痛みます。

自分がここにいたら山野辺さんと同じ感じになるだろうなあ、と共感してしまいます。

 

 

軽妙な会話がとにかく心地いい

とてもスリリングな内容と展開なのですが、そこにさらに味を出してくれるのが死神である千葉さんです。

 

あらすじに書いた通り死神はとても音楽が好きです。

隙あれば音楽を聴こうとする千葉さんが、山野辺夫妻の緊張感と対照的で和みます。

 

また死神には死がないため何百年も前から人間のそばにいます。

大名行列を見たかのように話す千葉さんの会話に驚く山野辺夫妻の反応もとても面白いです。

 

僕はあまり怖い話は好きじゃないのですが、このスリリングな展開も千葉さんの軽妙な会話があるから楽しみながら読み進めることが出来ます。

これぞ「死神の浮力」の醍醐味です。

 

最後に。

伊坂幸太郎さんの「死神の浮力」は緊張感のある壮大な物語です。

しかしその緊張感の中にもユーモアがありハラハラドキドキして楽しめます。

 

やっぱり伊坂さん作品は面白い…!

 

ぜひ皆さんも読んでみてください!

 

 

ちなみに前作「死神の精度」を読まなくても十分楽しめますが、せっかくなので前作から読むことをおすすめします!

(いつかあすよみ!でも紹介しますね!)